この話は、アニソンが大好きというドイツの女子高生が留学で日本を訪れ、高校の友達を巻き込んでアニソンバンドをやってしまおう、という話である。
話自体は、作者があとがきでも触れているように「ベタベタな話」なのだが、主人公のエヴァ(ドイツ人)の強引なキャラクター性と、サブキャラたちの動き方もなかなか綺麗で、最後まで安心して楽しく読めた。
あと、絵が可愛いのも魅力の一つか。
また、作品中ではツイッターやニコニコ動画等、我々が普段慣れ親しんでいるものが登場し、バンドメンバーにはボカロPが居るなど、非常に今の事情を反映した、ある意味ノンフィクション臭さえ感じてしまうような設定も個人的には良かったと思う。
なによりこの本で特筆すべき点は、実際のアニソンが作中で演奏されたり、聴かれたりすることだ。
最初読んだ時には、話の流れ的に「けいおんのパクりか?」と思ったが、その「けいおん」でさえ劇中歌として登場したときには恐れいった。
たいていの書籍ではそもそも曲名なんて登場しないし、曲が登場してもぼかされるのが普通なのだが、この本では全て曲名が羅列されており、ある程度アニソンを知っている人なら、より話に対する理解が深まる。逆にいうと、登場するアニソンを知らない人にはかなり酷なレベルの内容になっているとも思う。
作品中でこれらのアニソンは非常に上手く活用されており、僕はこれを一種の二次創作ではないかと感じもした。
要するに、曲が先にあって、小説が成り立つ、ということ。
このような試みは他の小説ではあまり見ないが(著作権切れの文学作品などをテーマにした小説は多いが)、メディアミックスの一つの形として、もう少し流行っても良いのではないか、と感じた。
もっというと、例えば何らかの商品の宣伝をするだとか、いわゆるステマだとか、そういうものの媒体としてのラノベだってあってもおかしくないし、それは充分「アリ」なのではないか? とも感じ、この本のおかげでラノベの可能性を改めて再認識することになった。
最後に、ネタバレを含む不満点を少しだけ。
この話は、冒頭に書いてあるように、ドイツ人留学生がアニソンをバンド演奏することがゴールになっているのだけども、どうせだからライブを日本最後のシーンとした上で、日本との別れまで描いたほうがもう少し綺麗に終わったと思う。
話の流れ・キャラ共にスタンダードで不満はあまりないが、そこだけはもう少し完結させてみても良かったんじゃないか、と思った。
でも好きですよ、この作品。
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