電撃小説大賞金賞受賞作品。
この話は、いわゆるパラレルワールドモノで、主人公の女子高生の世界では彼が、そしてその彼の世界では主人公の女子高生が死亡しており、それぞれの世界の彼女と彼が電話で通じている――というところから始まるストーリーである。
パラレルワールドを扱うのだからSFの世界観で話が進むかと思いきや、話は非常に現実的な進行に終始している。
どうやら「彼」と「彼女」はそれぞれの世界で事故死したのではなく殺されたらしく、その犯人をそれぞれの世界で突き止めよう、という話だ。
一見面白そうな話なのだが、少なくとも僕には全く響いてこない話だった。
あまり面白くなかったので、適当にダメな点を書いていく。
まず、ミステリ風味で話が進行するが、あまりにも犯人とトリックと動機が稚拙過ぎる点。この話、主人公達が殺された理由があんまりにも現実世界でよくある話すぎる上、一方で高校生にはまず有り得ないような設定で犯行が行われており、正直言ってミステリとしては終わってると思う。
いわゆるミスリードも使われていないため、話が綺麗にまとまりすぎて、「どんでん返し」と感じる要素がないものマイナス。
次にキャラクターが響いてこない点。主人公の女の子含め、他のキャラがあんまりにも月並で平々凡々としすぎている。良く言えば「等身大でリアル」、悪く言えば「平凡」。
ラノベとしてやる以上、「現実的でリアル」なキャラクターはあまり求められていないと思う。
感情移入できない理由の一つに、話が女の子側でしか進行しないことを挙げておこう。主人公側と彼氏側で視点を切り替えながら進めていけば、もっと緊張感があって楽しい展開にできたはずだ。互いのキャラの良さも引き立つ。非常にもったいなさを感じる。
最後に、せっかくの「並行世界」を生かしきれてない点。単純に電話が繋がってるだけじゃなくて、もっと世界の原理に基づいたトリックをきちんと使って欲しかった。ミステリ風に話を進めるのであれば、この並行世界こそ最大のミステリなわけで、そこを曖昧にしたまま話を終えてしまうのはあんまりにも杜撰。そこをファンタジーにするのであれば、もっと徹頭徹尾ファンタジーな話にしても良かったのではないか。
要するにどっちつかずなのである。
なぜこの作品が電撃文庫金賞なのか、僕にはちょっと理解できなかった。
「今後に期待」ということなのだろうか。
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