ご都合主義展開で消化不良。主人公の心情にだけ共感:「僕の学校の暗殺部」読後感想(ネタバレ有)

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良い部分は充分にあって、主人公のキャラやバトルシーン、展開は魅力的なのだが、いかんせん人物描写が薄すぎる(というより、バトルと銃でページ数使いすぎ)ことを含め、話の全体的な深度にばらつきがありすぎるのが目について残念な作品だった。
ただ要素として、殺人、銃、恋愛、殺人、セックス、レイプ、殺人等、高校生男子がおおよそ好みそうなものが配置されているのは理解できた。

この話の良い所は、主人公の零士の感情描写が的確であり、的を射ていること。
背の低いことをコンプレックスにしている零士が、ヒロインである裕佳梨に片思いして部活動に入り、その後裕佳梨とキスできたことで承認欲求を満たされ、コンプレックスを克服するという一連の流れは、実に高校生らしくて首尾一貫していると思う。

また、その後の展開で、弱みを見せてはいけないはずの交渉の場面で、敵に「死んだ彼女を生き返らせることが出来るのか」どうかを尋ねたあたりも、物理的に強くはなった一方で、まだ心の弱さを覗かせる零士に共感の余地を感じる。

だからこそ(悪い点)、シャワーから全裸のまま「見ても良いのに」と零士を誘惑したり、「出会い頭に言われた一言のせいで零士が気になる」という理由だけでキスしてきたメインヒロインの裕佳梨が、軽くてご都合主義な女として描かれ、その後あっけなく死んでしまうという流れは、あまりにも短絡的でもったいないと思った。

今回の話で主人公らの敵組織である「いるか人間」は、人の脳に寄生することで宿主の精神をめちゃくちゃにする生物「いるか」に侵された人間たちで、「いるか人間」がいかに危険で暴虐非道な振る舞いをするか、倫理的に最悪なことを行うかについてページを割いており、単純で分かりやすい「悪者」を作ることで、殺しの理由を正当化するのに一役買っている。

確かにこれは、若い読者には理解しやすいかもしれないが、脳を侵されたとはいえ相手は人間である以上、もう少し深い描写があっても良かったのではないか。
あと、これを素直に喜んで読めるほど今の中高生は単純じゃないと僕は思う

まぁ、「異型の生物や宇宙人、ゾンビには人類総出でコテンパンにやっつけちまえ」っていうハリウッド由来の思想は、あちこちの作品に反映されているので、この作品もそのうちの一つだと思うと納得も行くけども……。

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